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質屋が解説「有名人」

質屋が解説「有名人」

 

 普段は人通りがまばらな商店街も、その先にある松山市民会館があることで、コンサートやリサイタルがあると、一気に物凄い人通りとなる。

 

 ある日のこと、昼下がりの午後、初老と思われる男性が店先にやってきて、質流れ品を色々とみている。「何かお探しですか?」と声をかけると、「そこにあるエメラルドのブレスレットを見せてください」と言われ、手渡すと、腕にはめて「いいですね」とほほ笑んだ。

 

 次の瞬間、店に入ってきた、20代と思われる派手目な服装の女性が「き、きみまろさんですよね!」と、大声を上げる。。その初老の男性はゆっくりと、その女性の方を見て「はい、綾小路きみまろです」とほほ笑んだ。

 

 「あの!母が大ファンなんです!何かしゃべってもらっていいですか!」といきなり、スマホを向けて動画撮影を始めた。あ、それはちょっと、いやいや、と声をかけようとすると、きみまろさんは饒舌にその女性のスマホに向かって話し始めた。

 

 そして最後に「ちなみに、私は本人ですよ。コピーではありません」と言って店内の爆笑をさらっていった。

 

 質屋さんですから、コピーはありません。神対応のきみまろさん、その場所まで笑いに変えるなんて凄すぎる。その日の夕方から、松山市民会館で漫談のショーが行われていた。

 

 そんな場所にある質屋なので、プロレス好きだった祖母の話だと「プロレスラーの大木金太郎とユセフ・トルコが来て双眼鏡を買っていった」とか「ゴングというプロレス雑誌の編集者がカメラを買いに来た」と興奮気味に教えてくれたのを思い出す。松山市体育館でよくプロレスも行われていたらしい。

 

 商売がら言えない話も多いけれど、ほっこりした有名人のお話もいろいろあります。

 

担当)矢野質店(愛媛)やのくにこ