しちまる公式ページ|ボクは質屋さんの看板犬|大好きな相撲の力士に似た蔵のあたまが自慢なんだ♪

講談社Kiss誌5月号が発売されました。

こんにちは!しちまるです。

桜の開花前線が北上中!東京での満開の予想は3月27日だそうです。いよいよ長い冬が終わって、春がやってくるようですね。ホント、心待ちにしていました。でも、温暖化の影響なのか、桜の開花時期が早まっているようで、入学式には葉桜になっている可能性もあると聞き、少し複雑な気分になりますね。

さて、3月25日に講談社Kiss誌が発売になりました。もちろん我らが二ノ宮知子先生の「七つ屋志のぶの宝石匣」も絶賛掲載されております!今月の扉はどかんと志のぶちゃん、カラーです!紫色は古来より高貴な色とのこと。いいと思います。

今回も見所はいろいろあるのですが、ここは志のぶ達のラップバトルでしょうか。最後の方では志のぶがラップと短歌や俳句の共通点を解説し始めて顕ちゃんが呆れ始めたり、読んでいてお腹を抱えて笑ってしまいました。普段クールな志のぶがはしゃいでいる姿が新鮮。私はあまりラップは詳しくはないのですが、楽しく読めました。

ところで、実はこの“ラップ”と“和歌”のつながりを深く掘り下げた作品があるんです。それが曽田正人先生『Change!』

『Change! 和歌のお嬢様、ラップはじめました。』
(曽田正人/冨山玖呂/講談社)


本作は、ひょんなことから女子高生がラップの世界に飛び込むところから始まります。ゼロからラップを学ぶ彼女の姿を通じて、ラップというジャンルの基礎がわかりやすく頭に入ってくるのが魅力です。また、和歌とラップの類似点にも触れられており、日本の伝統的な表現とヒップホップ文化が重なり合う意外な面白さを味わえます。

さらに、曽田正人先生ならではの疾走感あふれる作風が、読み手を一気に物語へ引き込んでくれるので、気づいたらノンストップで読了してしまうはず。今月の『七つ屋志のぶの宝石匣』でラップと短歌の関連に興味を持った方なら、ぜひ併せて読んでみてください。新たな発見があること請け合いです。

『おくりびと』(さそうあきら/小学館)

 

本編の中に登場する「億り人」、その語源にもなった名作映画『おくりびと』は、スクリーンだけでなく、さそうあきら先生によるコミカライズでも楽しむことができます。人生の最後を送り出す納棺師の仕事を、しんみりと情緒的に描いた珠玉の作品です。映画を観たことがある方も、まだの方も、ぜひ漫画版を手に取ってみてはいかがでしょうか。

さてここからは最近読んだ漫画作品の紹介です。

ロケットの爆発と、心にそっと寄り添う宇宙漫画の出会い

 

先日、イーロン・マスク率いるスペースXのロケットが、打ち上げ直後に爆散したというニュースが報じられました。1月にも同様の事例があったばかりで、その試行錯誤のスピードとリスクを恐れない姿勢には目を見張るものがあります。イーロン・マスクという人物には賛否両論があるとはいえ、宇宙開発に注ぐ熱意とフットワークの軽さは特筆すべき点でしょう。

そんなニュースを目にしたことで、ふと「宇宙」という言葉が頭の片隅に残っていたのでふたたび宇宙という言葉をキーに漫画を紹介いたします。泥ノ田犬彦先生『君と宇宙を歩くために』(講談社)売野機子先生『ありす、宇宙(どこ)までも』(小学館)の2作品です。

君と宇宙を歩くために』(泥ノ田犬彦/講談社)

“見えづらい苦手さ”に焦点を当てた青春物語

この作品では、コミュニケーションが苦手な転校生・宇野敬介と、勉強に苦戦しているヤンキー高校生・小林大和が共に過ごす中でそれぞれの生きづらさと向き合っていく様子が描かれています。宇野は自閉スペクトラム症(ASD)の特性を、小林は学習障害(LD)の可能性を示唆されているなど、一見わかりにくい「苦手さ」に光を当てている点が特徴です。

LD(学習障害):知的な遅れはないものの、読む・書く・計算など特定の分野で極端な苦手さが現れる状態

ASD(自閉スペクトラム症):社会的コミュニケーションや対人関係、想像力の面に特性が現れる発達障害の一つ

『ありす、宇宙までも』(売野機子/小学館) 

“生きづらさ”をテーマにしたもう一つの成長物語

実は『君と宇宙を歩くために』と同じく“宇宙”を題名に入れて、異なるアプローチで「生きづらさ」を描いた作品が売野機子先生の『ありす、宇宙(どこ)までも』(小学館)。幼少期からのバイリンガル教育が両親と死別することによって中途半端に終わり、日本語も英語もも十分に習得できない「セミリンガル」という課題を抱えた少女・ありすが、宇宙飛行士になる夢に向かって障害を克服し奮闘する物語となっています。

 

セミリンガル:複数の言語を同時に学んだ結果、いずれの言語も不十分で、語彙や文法が不足している状態

実はこのふたつの作品、「生きづらさ」への向き合い方も大きく異なっています。

『君と宇宙を歩くために』は、まず自分の苦手さや特性をきちんと認知し、そこから受け容れて対処していく姿がじっくりと描かれています。一方、『ありす、宇宙までも』は、自分に足りない部分や課題を認知したうえで、克服へ向けて奮闘していく物語。どちらも「認知」という段階を経ることは共通していながら、その先のアプローチが異なるため、同じ“生きづらさ”というテーマでも読後の印象が変わってくるのが興味深いです。両作を読み比べると、自己受容と克服、それぞれのプロセスが照らし出す「生き方」の多様性を改めて感じられるはずです。

 

これらの漫画を読んでいると、自分が抱えるささやかな苦手や不安に共感できる部分があり、登場人物たちの歩みをより身近に感じられます。スケールの大きな宇宙開発のニュースとはまた違う形で、“自分自身の宇宙”を進んでいく彼らの姿に触れてみてはいかがでしょうか。

なお、単行本の刊行が待ちきれない方には朗報です。『君と宇宙を歩くために』は講談社のウェブコミックサイト『&Sofa』で、『ありす、宇宙までも』は小学館の『ビッコミ』にて連載中。ぜひチェックしてみてください。

桜の季節が始まると新年度がスタートし、新しい作品との出会いにも心が弾みますよね。今回はラップから宇宙まで幅広く取り上げましたが、どの作品にも“生きづらさ”や“未来の可能性”に真摯に向き合う共通点があるように思います。

 

自分の苦手さを認知して受け容れたり、克服に向かって奮闘したりと、どの物語にも共感したり背中を押されたりするような場面がたくさん詰まっているのではないでしょうか。私自身、読んでいて思わず励まされたシーンがいくつもありました。新年度を迎え、不安や期待が入り混じった方も少なくないと思いますが、こうした作品を通じて日常をほんの少し前向きに変えるヒントを得られるかもしれません。

 

そして、しちまるによる「最近読んだ漫画の紹介」シリーズも、今回の更新を一区切りとさせていただきます。次にお会いできる日を楽しみにしていますね。皆さん、どうぞ素敵な漫画ライフをお過ごしください!